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Re: ヤル1カとヤキ1カ

 投稿者:桜と錨  投稿日:2017年 1月15日(日)21時35分20秒
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  横鎮さん、コメントありがとうございます。

折角の機会ですので、無線電信と戦闘詳報について少し。

旧海軍の通信について、その無線電信についての通信及びその要務に関連し、戦闘時における送信側による実際の発信から、受信者の指揮官に届くまでの概略は次のようになります。

1.送信側の送信機の正常作動の成否
2.空間状況と距離による受信側への電波の到達の有無
3.空中線の向き及び状態を含む受信器での受信の有無
4.受信室での待ち受け状況を含む電信員の認識
5.電信員による受信(受信紙)
6.受信した電文の翻訳(回覧用受信紙)
7.受信記録への記載
8.通信指揮官による確認と回覧
9.艦橋又は司令部作戦室などでの受領
10.副直士官又は幕僚などによる受領
11.指揮官への報告
12.戦闘記録などへの記載

そしてもう一つ。

無線電信では、必ず発信者、宛先と発信日時が電文の中に入ります。 そして宛先の受信者が電文全てを正常に受信した場合は了解符、一部不明などの場合は再送符を送ります。
何かの都合により宛先の応答が無ければ発信者は自動的に再送しますし、受報者があれば宛先の代わりに応答し、電文を宛先に中継することもあります。

したがって、一方的にたれ流すだけで、どこ宛かも判らない、どこが受信したのかも判らない、などということは基本的にありません。

ただし、偵察機などからの敵情報告などについては、その基地又は母艦との特殊交信法が定められていることがあり、この場合他の艦などでは受信してもどこからの発信か判りません。 この場合、受信した基地又は母艦が他の艦などに通常の通信系統を使って通報する必要があります。


さてここで問題の「ヤキ1カ」電です。

この「ヤキ1カ」電の内容については、第1航空艦隊に対する25日の1150番電での攻撃要請として戦闘詳報に記述されており、これにより本来の電文が上記の11.の栗田に対し報告れたことは確かでしょう。

ただし、この「ヤキ1カ」電はこの11.の段階だけしかなく、それ以外の段階での記録などは一切残されておりません。 もちろん他の艦・部隊の記録にもありません。 栗田がこの電文の内容によって情勢判断をし、反転を決めたという極めて重要なものであるだけに、これは大変不思議なことと言わざるを得ません。

先にも申し上げたように、「戦闘詳報」というのは作戦経過などを後から纏めたものですから、不必要なもの、一連の記述から合わないもの(不都合)なものなどが書かれていないことは多々あります。

もちろん電信のみならず視覚通信も含めた全てのものを網羅しているわけではありませんし、また他の艦艇・部隊の戦闘詳報と整合をとっているわけでもありません。 これは第1遊撃部隊以外の戦闘詳報と付き合わせていただければお判りいただけるでしょう。

同様な問題はHN「K2W」氏ご指摘の「ヤル1カ」電でも同様なことが言えます。

したがって、このことを含めた栗田艦隊の反転については、新たな原史料でも出て来ない限り、これ以上のことは判らないでしょう。


なお、この捷号作戦について通信も含めた分析は、多少栗田の肩を持つきらいはありますが、福田幸弘氏の『連合艦隊 サイパン・レイテ海戦記』(時事通信社)が今のところベストなものの一つであると思います。

また、捷号作戦時も含めた旧海軍の通信の実態については、当サイトの『史料展示室』コーナーで公開している海上自衛隊の部内史料『海軍作戦通信史』に詳述されていますので、ご参照下さい。

 
 
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